「いけーる・なまげーる」の巻
品質改良した植物が、何代かのうちに劣性因子が淘汰されて、元に戻ってしまうことを、俗に先祖返りしたという。この状態を秩父方言でいえばイケールである。「ウチの子は、よく勉強しはじめたと思ったら、いつの間にかイケーッちゃって、この頃はテレビの番人だい」などと遣ったり、乾いた洗濯物を取り込むのを忘れて湿気を帯びたりしたときには、「せっかく乾いたのにイケーッちゃった」という。
「生乾(なまかわ)き」とは乾き方が不十分だということ。なま煮え、なまかじり、なま暖かいなども同じナマの遣い方である。乾いた物がイケールときには「生返(なまげー)る」とも言うが、これも秩父独特の言葉である。
イケールとは今の姿・形・状態から、本来の姿・本性に戻ることを表す言葉だから、隠れていたもの・失せていたものが、現れ、生き返ったというこころが語源となっているということだろうか。いずれにしても、どちらも辞書にはない秩父の宝物といえるようである。