「カサッツマ」の巻
秩父の山村では瓦やトタンが普及するまでは、入母屋作りの家は藁屋根、切妻造りの家は板屋根と相場が決まっていた。だが、家の構造とは関わりなく、家の上手をカサッツマ、下手をシモッツマといった。カサッツマの小屋とかシモッツマの畑などというように、家を基準にして上下の方向を指す言葉だった。シモと対比してみればわかるように、カサは嵩と書き、物の高さ大きさや分量を示す言葉である。物を積んで高くすることをカサネルといい、多い分量をカサがあるとか、カサバルという。秩父の方言では、ガサとなる。また、秩父では川を基準に上下を分ける。
上は地形が高いからカミとカサは同義語となる。ツマは物の端とか副え物の事。刺身のツマがいい例である。自分を基準にすれば、妻も夫もツマで古くは女性も夫をツマと呼んだが、男社会になるにつれてツマは夫の専用語となった。最近の世相をみれば、あまり遠くない時期に逆転するかも?というわけで、カサッツマは家の上の端の方という意味だったのである。