「やねもん」の巻
成仏とは仏教用語で、あらゆる煩悩を脱して悟りを開くこと。つまり理想的な人格の完成をいう。
これを生身の人間にはなかなか難しいことなので、死んだ肉体が滅した時にそれができると考えられたことから、室町時代の頃から単に死ぬことをも成仏というようになった。
葬儀や法要に香典を供えるとき御霊前と書いたものと御仏前と書いたものとの、どちらを使うか迷うことがあるが、仏教では死後の四九日の間は肉体から離れた霊が家の辺りを浮遊すると考えられている。
その霊を弔う法要を七日ごとに七回重ねると霊は成仏して昇天するという。だから七七日忌までは御霊前で以後は御仏前ということになる。
秩父では四九日間は霊は家の梁に止まって家族を見守る事を考えて、屋根者(やねもん)と呼んでいた。葬儀後間もなくボヤを出して危うく消し止めることのできた家のおばあちゃんが屋根者に守ってもらったと言って熱心に拝んでいるのを見たことがある。