「つがいい」の巻
交通の便がいい所をツガイイと言った。通と考えられていたが、実は津であるようだ。『和妙抄』(934)は「津は水を渡る処」 『名語記』(1275)は「船の停まり」、「日ポ辞書」(1603)は「すなわち港」と説明しているように、津は海岸や河口、川の渡し場など船の停泊する所をいう。津は物資の集積場であり、交易の場として人が集まる。
古代、薩摩の坊津、筑前の博多津、伊勢の安濃津を三箇の津といって、最も賑わう港町だった。
伊勢の安濃津は伊勢平氏の水軍の拠点、中世にになると対明貿易港として栄え、伊勢祭りが盛んになった。江戸時代には伊勢街道の宿場町として「伊勢は津でもつ」とうたわれた。現在の津市である。この頃には京都、大阪、江戸を三箇津と呼んだが、これは本来の港の意味を離れて、人の多く集まる所の意味になっている。交通の便がいいというようになったわけである。そんなことから、この言葉が残っているのは、山国の秩父と群馬や神奈川の秩父に近いところだけというのも興味深いことである。