「だんべー」の巻
「これだんべー」、「そうだんべー」と、文末につけるダンベーは、
江戸時代には関東のダンべー言葉といわれて、上方からは奇異に思われていた。
しかし、江戸中期以降には江戸市中でも言われなくなって、
周辺の田舎言葉と思われるようになっていった。
安永四年といえば今から234年前で、日本は不況の真っ只中、
アメリカの独立戦争が始まった年だが、その年発行された『道中粋語録』では、
中山道軽井沢の宿屋の飯盛女がしきりにダンべー言葉をつかっている。
今では高級住宅地の軽井沢も、当時は安宿のひしめく宿場で、
田舎町の代表とされていた。
ダンべー言葉は秩父や群馬県辺りでは今でも堂々とまかり通っているが、
元は「何々たるべし」という由書緒正しい日本語が変化したもので、
地方によっては「ダベ」とか「ダッペ」などとなって生きている。関東のダンべーは、
群馬県から長野県に至る鳥居峠を越えると、突然「ズラ」という表現に変る。