「かかァ」の巻
秩父の「カカア天下」は、生産労働が男女共同だったので、男尊女卑の風土にならなかったために、外部からそう見えたもの。
カカァとは自他の妻をやや軽視した呼び方だが、元は子どもが母親に親しみをこめて呼んだカカをおとなが真似たもので、おとながつかうようになってから親しみの意味はこめながらも、だんだん卑語めいた意味をもつようになった。
一八三七年頃の『守貞鏝稿』は「己が妻を京阪にてかかと云。江戸にてかかあと云」と記している。
カカにていねいな気持ちを添えるとオカカとなるが、秩父風にいうとオッカーとなってしまい、あまり丁寧な感じはしない。
これに様がついたオカカサマは最高敬語だが、これが変化したものがオカァサンで、明治後半から「標準語」として教科書に採用され全国に広まった。
しかし、秩父ではまた少々変化して、オッカサン、オッカチャンとなって、最近まで普通に使われていた。