「おとつい」の巻
昨日の前の日はオトトイ。漢字では一昨日と書く。昨という字は、日に積み重ねるという意味を表わす乍を加えたもので、以前とか昔のこと。転じて、位置やへだてた前の日という意味になった。
ところで一昨日を秩父ではオトツイともいう。トがツに訛ったものと考えがちだが、それは間違いで、実はオトツイの方が古い日本語なのである。千二百年も前の『万葉集』では昨日、今日に並べて乎登都日と書いている。それから二百年後の『源氏物語』にはオトトヒとあり、それより六百年後の『日ポ辞書』では『オトトイ』と記している。並べるとオトツヒ→オトトヒ→オトトイとなるから、イはヒの変化とわかる。
オトは遠くを表わす古語オチが変化したもので、漢字を当てれば「遠ツ日」となる。ツは「沖の白波」などというように、現代のノと同じ意味である。
つまり、秩父に残る古語オトツイは、漢字の発想と同じ言葉だったということになる。