「いもつくりばな」の巻
古代の王は暦を熟知していた。
日本でも昔の指導者は聖=日知りとして崇められた。
しかし、たとえば立春といっても、地方ごと同じではない。
だから、地方ごとに日知りはいて、
ある地域では、あの花が咲いたら芋を植えろなどと教えた。
秩父のある地域では岩ツツジをイモックリ花と呼んで、
あの花が咲いたらジャガイモを作れと教えた。
正式名称はミツバツツジ。
春一番に咲くから秩父名はイチバンツツジ。
二バンツツジは山ツツジ。
これが咲いてからイモを植えても遅いと教える地域もある。
あちこちの山の峰に抜きん出て立つ松の老木がある。
天狗の腰掛け松などと呼ばれて、
伐ってはならぬと教えられて守られてきた。
これはお陽さまの昇る位置から、
その耕地にやってくる季節を知る目印の木だったのだ。
秩父では赤トンボをソバ播きトンボと言った。
八月のお盆の前後、
赤トンボが出たら秋ソバを播けという、お日知り様の教えである。