「いしっこづき」の巻
仏壇に拝礼するときには、必ず線香に火を点し、お鈴をならす。
秩父市久那地区にはジャランポン祭りという珍しい行事があるが、ジャランポンとは仏事に用いる大型の銅鑼のような鐃と鈸という金属楽器を打ち鳴らす音を擬音化したもので、葬儀のこと。
歌舞伎や船出の合図などに用いる銅鑼も、元は法会用の楽器だった。
お経を上げる時にも金属製の叩き鉦を使うし、お寺には梵鐘がつきもの。
このように、仏事と金属楽器が切り離せないわけは、仏教による法事が盛んになった頃は金属が貴重品で、その音を聞かせることは個人の霊を慰めることになると考えたためだといわれている。
参拝時にならす神社の鰐口も、元は神仏混淆の産物であって、仏壇のお鈴と同様に神様への参拝の合図である。
秩父では墓参りの時に小石で墓石を叩いて先祖に参拝の合図を送る慣わしがあったが、これを石小突きをいった。
鈴など持たない秩父の庶民の素朴な租霊へのあいさつの仕方だったのである。