「シッペタ」の巻
柿の木の下に、実になり損ねた蔕(へた)が、掃き集めるほど落ちているとがっかりする。これが実になっていてくれたらなあと思う。果実の蔕や根菜類の根の方などをシッペタという。ヘタだけでいいのに、何故シッペタなのか。
江戸川柳に「門(かど)涼みしっぺた叩き叩きいる」がある。江戸っ子はフンドシひとつで夕涼みをした。夕涼みの隙(ひま)にまかせて「こう暑くっちゃかなわねぇや」
などと言いながら、自分の尻をペタペタと叩いている情景である。
『常陸風土記』(七二一頃)では「海辺」と書いてウミベタと読ませている。辺は端(はし)や縁(ふち)と同じ意味である。そういえば、口の辺りはクチッペタ、頬の辺りがホッペタである。
だから、やはりシッペタは尻辺である。果実の蔕をシッペタというのは、その部分を果実の尻に見立てた言い方だということがわかる。根菜類の根の方も同じ見方で言ったものである。