「からんどう」の巻
ガランド・ガランドウって、聞いたことがあるだろうか。空き缶を見て、ふと思い出した言葉だが、今ならカラッポと言うだろうか。それも一昔前の秩父弁ではカランポーだった。
私は幼い頃、ガランドとは、広い建物の中がガランとしているからそういうのだと思っていた。ところが、後に寺の堂宇をいう伽藍が語源であることを知った。本来は僧が仏道修行をする、清浄閑静な所を伽藍といったのだが、後に寺の建物の総称になった。寺は本堂から塔・講堂・鐘楼・経蔵・僧房・食堂の七つの堂宇から成り、これを七堂伽藍という。仏法を守る神が伽藍神である。
今でも寺に参詣して、そこに人がいなかったりすると、広い堂の中はガランとしている。そのガランとした感じを催させる伽藍堂が、空洞・空ッポを指すガランドという言葉を生み出した。それは幕末頃からの事だという。
今九十歳の私が幼い頃よく遣ったガランドは、その頃には意外と新しい言葉だったのである。