「ハケ」の巻
四国、徳島県の祖谷渓の絶壁に「大歩危・小歩危」がある。
歩危はうまい当て字だが、ホケ(ボケ)徳島地方の方言でガケのこと。
ガケは山や川岸、海岸の欠け落ちた所のことで、古くはカケといった。
カケは秩父ではハケに変化し、徳島ではホケになったのだから、あの絶壁が秩父にあれば「大バケ・小バケ」とよんだはずである。
ハケといえば小鹿野町のヨウバケが地質学上世界的に有名である。
ヨウバケの語源は「陽バケ」として、陽のあたる崖と説明されているが、これはうまい当て字と同じで、日本語の歴史からみれば根拠のないこじつけにすぎないのだが、なんとなく説得力はある。
だが、太陽は民間のよび名はお天道さまか、お日さまで、陽などと音でよばれた例はない。
岩は古くはイハ。
それがイワに変化する一方、群馬、新潟辺りではユハ・ユウと変化している。
これに隣接する秩父では夕飯をヨウメシともいうように、ユウをヨウといった。
つまり、ヨウバケは群馬・新潟ならヨウバケで、岩の崖ということなのである。