「じんじく」の巻
「昔は道が悪かったから、雨でも降りゃ高島田の嫁ごだって長ぐつで行ったもんだが、
どうもジンジクしねェやー」などとつかうジンジクは、釣り合いがとれているとか、
よく似合うという意味である。
これは『平家物語』や『義経記』にも出てくる「純塾」が話し言葉としてジンジクになったもの。
元の意味は完全に塾したということ。
完熟すれば、技なら熟練、物事の不均衝もなくなるから、似合ったり、うまくいくという意味にもなる。
三百年ほど前の『立身大幅帳』には「談合順じゅくして」とあり
一八五年前の『軒並娘八丈』では「和合」と書いてジンジクと仮名をふっている。
意味はどちらもうまくいったということだが、純熟という元の意味は忘れられていたようである。
「腰をもむ婿で今度はじんじくし」は江戸の川柳。前の婿さまはどうやら姑とジンジクしなかったらし
い。