秩父弁だんべぇ

「ひぞる」

松の木を建材として使うには、伐ってから10年以上寝かしておかないと「暴れちまってどうしょうもねぇ」という。「板なんどにしてもヒゾッちゃって、直しなんだぁ効(き)くもんじゃあねぇ」と。松は半端な乾きだと、板にしても時と共に捻じれたり歪んだりしてしまう事を、暴れるとかヒゾルと言ったもの。

秩父では子供が捻(ひね)くれたり、拗(す)ねたりする事をもヒゾルといったが、この頃はあまり聞かなくなった。江戸時代の、当時の人情を描いた本には、拗ねてイヤ味をいう事を「ひぞり言」といい、すぐにクレームをつける客が「ひぞり客」、重心が定まらずにくねって回る独楽(こま)を「ヒゾリ独楽」などと呼んでいる事から、当時の江戸言葉が、秩父には遅くまで残っていた事がわかる。

枯れて反った葉を「ひぞり葉」という。そこから語源は「干反る」だろうと見当がつく。木の葉や板の状態を表す言葉を、人間の異常な態度にも広げたおもしろい言葉である。

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