「たまか」の巻
「たまか」とは誠実・実直・物事を緻密(ちみつ)に処理できる、また倹約するなどの意味を表す言葉だが、今では方言かと思われるほど、ほとんどつかわれなくなっている。
これは元禄時代から文献に登場した言葉で、「たまかに商いの道に精を入れ」(西鶴諸国ばなし)、「親の代からの手代でたまかな者なれば妹の夫となし」(歌舞伎・明星茶屋)などは、誠実・実直の意味を表している。
「源氏火にて文を読むなどたまかな事」(好色二代男)の源氏火は灯油を節約したわずかな灯のことだから、倹約する意味。また、「とかく女中は質素にするがよい」(六阿弥陀詣(ろくあみだもうで))の質素にタマカと仮名をふって、意味をそのまま示している。
以上は皆、1600年代後半の書物だが、1700年代になると、前後の文からして、細かすぎてめんどくさいとか、気苦労なという意味で「たまかなる奉公いやになり」(禁短気)などの用例が出てくる。
秩父ではまだ、かすかに生きている言葉である。
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