「ハーテ」の巻
『万葉集』(759年頃)以来「風早の」といえば松原で有名な三保の浦に続く枕詞である。
ここは天女が風にのって降りてきたというのだから、よっぽど風の強い海岸なのだろう。
秩父では天女とまではいかないが、冬になると上信の山脈を越えて風にのって冷たい雪片が飛んでくる。
これを関東方言で風花という。なかなかロマンチックな言葉である。
秩父でも今は風花が普通になったが、ひと昔前までは、とくに倉尾~上吉田~日野沢ラインではハーテとよび、また、フッコシという地域もあった。
フッコシは吹っ越しで、山を吹き越してくる雪ということで分かり易い。
小林一茶のメモ帳には、長野辺りでは「降りたての雪をホウテという」とある。
ハーテ・ホーテは疾風が訛ったものだろう。
広辞苑によれば、疾風とは「急に激しく吹き起こる風。寒冷前線に付随することが多く、降雨、降雹など伴うことがある」と。
ただし秩父のハーテは雨や雹ではなくて、横なぐりの雪である。